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11月25日~12月2日に開かれたプラスチックごみに関する条約制定に向けた多国間交渉が開かれた会場のアレックス・ゴドイさん=韓国・釜山、本人提供

気候変動の話をしよう⑧ チリの環境専門家 アレックス・ゴドイさん

 多種多様な生物の体内で見つかる汚染だけでなく、大気中を漂うマイクロプラスチックが氷河の溶解を促進するといった新たな環境影響についても明らかになり始めています。「2040年までにプラスチックによる新たな海洋汚染をなくす」といった目標を多くの国々は共有しつつも、韓国・釜山で開かれた「プラスチックごみ汚染に対処する条約策定に向けた政府間交渉会合」では条約案をまとめることができませんでした。なぜなのか――。

 南米チリの環境政策専門家で、国際学術組織「海洋研究科学委員会」のメンバーとして会合に参加したアレックス・ゴドイさん(48)は、「政治的な分断があることが明白になった」と振り返ります。議論の焦点は何だったのか、そして日本の姿勢への評価について、聞きました。

気候変動への危機感を共有し、多くの人たちのアクションにつなげていく。そのためのコミュニケーションのあり方について、様々な立場の方から、意見を聞くシリーズです。

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 韓国・釜山での会合は、各国政府の立場の大きな隔たりを示す、とても複雑で、激しい議論を伴ったものでした。原因はこの問題の本質にあります。工業製品のプラスチックが、果たしてどれだけのコストを強いるのかわからないほど広範囲に環境および健康への影響を与えていることが明らかになったためです。

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 今回明白になったのは、原材料の石油製品輸出国を含むプラスチック生産国側とその輸入国側の間にある政治的な分断です。

 生産国側は、プラスチックの生産削減を提案されると、自国の産業への直接的脅威と捉えました。現在のグローバルな世の中で、完全にプラスチックを何か別のものに置き換えることなんて全く不可能なのにもかかわらず、です。

 現実的には、目標設定を伴った生産削減や生産の安定化が、プラスチック生産の持続可能性を高め、固有の市場がうみだされることで価格安定をもたらすかもしれません。

 特定の種類のプラスチックを削減することで、価格変動の少ない高付加価値なプラスチックの生産にシフトし、より効率良く稼げる市場を得ることができるかもしれません。さらには、丈夫で、リサイクル可能で、生分解性のあるプラスチックや樹脂を作り出すための革新的な技術を育てることにもつながります。経済的なインセンティブと環境面でのゴールという双方をすり合わせながら、サステイナビリティーを実現できるかもしれません。

 残念ながら、このような合理的な考え方は、生産国側と輸入国側の間で感情的なやり取りが続くことによって覆い隠されてしまい、戦略的もしくは技術的な熟考の機会もどこかに追いやられてしまいました。

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全体会合が始まる前、会場の外で「No More Plastic!」と声をあげる人々=2024年11月25日、釜山、玉木祥子撮影

 それゆえ、今回の会議で議長が示した条約素案の第6条(生産)に関する部分が、会議の焦点になったと思っています。

 行き詰まりを打開しようと…

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